恐ろしい歯周病について

はじめに
はじめに

朝・昼・晩と一生懸命に歯磨きをしているのに、なぜ虫歯や歯周病にかかってしまうのだろうと不思議に思われたことはありませんか?
残念ながら歯を磨いているのと磨けているのとは違います。人は皆、歯磨きの磨き方に癖があるので意識をせず磨いていると歯ブラシの毛先が正しく当たっている場所と正しく当たっていない場所ができてしまいます。そして、磨けていないところにプラークが溜まり、虫歯や歯周病になってしまうのです。

歯周病とは

歯周病とは歯槽膿漏とも呼ばれており、歯肉に炎症が引き起こされ、放置しておくと膿が出たり、口臭がひどくなり、歯を支える歯槽骨を破壊し、最後に は歯が抜け落ちてしまう病気です。歯周病の怖いところは、虫歯と違って初期段階では痛みを感じることが少ないということです。歯の表面は虫歯ではなくても 歯ぐきの下で歯周病が進行し、虫歯になって久しぶりに歯医者に行ってみたら歯周病が進行していたということが多いのです。

歯周病の原因

歯周病の原因には、大きく分けて2つあります。
1.歯周病菌による感染
2.咬み合わせのバランスが崩れて、無理な力の負担が根を支えている骨に集中する事によるもの

ほとんどの場合は、両方の問題による事が多く、生活習慣やストレス、唾液分泌量の低下(ドライマウス)も大きく影響します。また、細菌に対する感受性にも 個人差があるため、歯周病の進行する速度はお一人お一人違います。家族性もあるといわれているため身近に歯周病だと思われる方がいるときは要注意です。

全身疾患との関係

歯周病は様々な全身疾患のリスクになります。

歯や歯ぐきの健康は口の中だけでなく全身と関係しています。口の中には何百種類という細菌が生息していますが、口から体の中に入り込むと様々な病気(心臓病、肺炎、糖尿病、早産等)を引き起こすことが知られ、医科でも問題になってきています。

歯周病は歯周病菌のかたまりであるプラークや歯石による歯ぐきの炎症ですが、たかが口の病気とあなどってはいけません。歯周病の人が心臓病になる確率は2~3倍にあがります。

歯周病の原因

バイオフィルム
お口の中には300~400種類の微生物が存在します。微生物が凝集し、歯面に付着した状態がバイオフィルムです。
歯周病菌も虫歯菌もカビの菌(カンジタ菌等)といっしょに、お口の中で感染や炎症を引き起こす事が近年わかってきました。どなたのお口の中にも300~400種類のもの細菌が存在します。細菌と食べカス、唾液の酵素が反応して48~72時間位でプラークという歯の表面に付着するネバネバ した白いものになります。これが炎症を引き起こすのです。バイオフィルムを除去するためには、定期的なプロフェッショナルケアが必要です。

プラークと歯石
歯石とはプラークが固まって(石灰化)できたものであり、この歯石は表面がザラザラしているために、細菌がつきやすくなります。目で見えるところに付く歯石よりも、歯と歯ぐきの隙間に隠れて見えない歯周ポケットの中の歯石(歯肉縁下歯石=しにくえんかしせき)が歯周病を悪くします。歯石は、歯ブラ シでは除去できないので歯科衛生士の協力が必要になります。

喫煙
治りにくい歯周病の患者様の約90%以上が喫煙者であるというデータがあるようにタバコは体の免疫機能を弱め、治療効果を妨げます。

ドライマウス
歯周病とドライマウス(口腔乾燥症)は密接な関係があります。お口の中が乾燥すると、細菌が繁殖しやすくなり、歯周病や虫歯が多発します。
歯周病の進行

出血は歯周病の特徴。 歯周ポケットの深さで進行の度合いがわかります。

歯周病がどれだけ進行しているかは、歯ぐきの状態を見ればわかります。歯ぐきからの出血は歯を支える歯ぐきに炎症がある証拠で、歯周病の特徴的な症状といえます。

炎症が進み歯周ポケット(歯と歯ぐきの隙間)ができるほどになると歯を支えている顎の骨の一部である歯槽骨(しそうこつ)の破壊がはじまります。歯周ポケットの深さが4mm以上になると病状はかなり進行しているといえます。ポケットの中は歯周病菌が繁殖しやすい環境なのでどんどん増殖し、歯周ポケットの深さが6mm以上になると歯槽骨の破壊がさらに進み、ついには歯が抜けてしまいます。

歯周治療を希望して来院される患者様の多くの場合は、歯周病の何らかの症状がすでに現れており、かなり病状が進行しているケースが多く、治療に要する期間も長くなります。治療は早く終わるにこした事はありませんが、じっくりと腰を据えて治療を受ける心構えを持つ事が最も重要です。

歯周病01
矢印
歯周病02
矢印
歯周病3
歯周病の治療ステップ

歯周病の治療には、患者様それぞれにあった計画的な治療が必要となりますが、一般的に歯周治療は以下のようなステップで行われます。

1.プラークコントロール
ステップ
2.バイオフィルムの除去
ステップ
3.プラークコントロールの確認

ステップ
4.リスクファクターの改善
ステップ
5.再検査
ステップ
6.より良いお口の環境を得るための治療
歯周組織および咬合の崩壊
それでは歯周組織と咬合の両方にダメージを受けた場合、どうしたらいいのでしょうか?患者様お一人お一人で、治療方針、治療方法が異なれば、目指すゴールも違います。例えば、抜歯した場合、Br(ブリッジ)・義歯(入れ歯)・インプラント(人工歯根)等、様々な治療方法があります。しかし、すべての患者様に共通することは、歯周組織を健康な状態に戻し、上下・左右・前後バランスの整った咬み合わせにすることです。

このバランスのとれた咬み合わせにすることがとても重要です。
再発を予防するには
再発を予防するには

再発を予防するには 、定期健診をおすすめします。

治療によって歯周病が改善すれば、定期的なメンテナンスに移ります。定期的にきっちりとメンテナンスを行えば、歯周病の進行は食い止める事ができます。適切な歯磨き技術を身につけ、プラークを除去できれば、歯周病は改善していきます。

カビ菌は口腔内常在菌といって、お口の中に住み着いている菌です。徹底的にやっつけても、空気中や食べ物や手の指などから再びお口に戻ってきます。全滅させる事は難しいのです。ですから、毎日の歯磨きと歯科医院における定期的なプロフェッショナルクリーニングが大切です。

カビ菌が増えすぎると歯ぐきが腫れるなど、悪い影響が出てきます。また、カビ菌は歯周病菌の快適なすみかにもなりますので歯周病菌が再感染しやすくなります。定期的に歯科医院に通って、歯周病菌が再感染しないようクリーニングを行う必要があります。

最後に

多くの方は一本でも多く自分の歯を残して一生豊かな食生活を手に入れたいと感じているはずです。虫歯も歯周病も感染症であり生活習慣病のひとつです。
きちんと治療を受けて歯磨きと生活習慣を見直せば、どちらも防げるものなのです。そして、再発しないように定期的なチェックを習慣にすることで生涯、自分の歯で過ごせる豊かな生活が手に入るのです。