予防治療とは

予防治療
予防治療

子供のころから、ひどくならないうちにきちんと歯科医院を受診されていた40歳の女性の例です。
お口の中を拝見すると、とても40歳とは思えないような黒々とした金属の歯がずらり。治療していない歯はほんのわずか。失った歯は2本。歯周病も年齢の割に進んでいました。実はこういう方はとても多いのです。歯科の治療に後ろ向きだったのなら、まあ仕方ないのですが、むしろこまめに歯科医院に通っていたのです。

虫歯や歯周病のような慢性疾患は、悪くなるたびに治療を繰り返していたのでは、健康に決してプラスになりません。歯や歯ぐきの病気の多くは、細菌の感染症です。ひどくなるかどうかは、生活習慣や体質によって決まります。ですから、原因をなくし、生活習慣やからだの弱点を改善することが本当の治療です。そうすれば、年をとっても歯で苦労する心配はありません。慢性の病気では、予防がより良い治療です。

治療中心の医療から、軸足を予防に移すことは、海外でも行われています。英国や北欧では、大人になるまでは歯科医療は無料です。子供においては予防中心の医療です。逆に大人の場合、いったん治療になると高額の患者負担になるので、多くの人は自分の身と財布を守る予防管理のために歯医者さんに通院しています。

日本では、健康管理のために歯科医院を定期的に利用している人は、まだわずかです。それもいったん歯を悪くして時間とお金をかけた人が、健康管理の大切さに気づいて通っているのが実状です。ところが、調査によると、健康管理の受診経験のある人のうち95%もの人が、今後もそのような通院を続けると答えています。悪くもないのに歯医者に通う。これは一見不必要で面倒なことのようですが、その価値を知りその気持ちよさを経験した人にとっては、日常的な習慣になっているのです。

私たちは、一人でも多くの人が医療の利用の仕方を変えることを願っています。治療をするためではなく、健康を守るためのかかり方への転換です。歯科で主に健康を守る業務を専門にしているのは歯科衛生士(デンタル・ハイジニスト)です。新しい歯科の利用の仕方は、一言で言えば自分の担当のハイジニストをもつことから始まります。「マイ・ハイジニスト」、これが世界一のお口の健康を得るための合言葉です。